春の夢のクリューナ

PBW 《シルバーレイン》のPC・クリュについて色々書いてます。 全体の書き方は背後とPC混じりです。                   分からない人は回れ右しようね。お姉さん(お兄さん?)との約束だよ(by背後

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シロが忍犬修行しました

ほぼ一年ぶりのSSです。
結社の雑談より、タイトル通りのネタを頂いて現実化させました。
そしてシロが多く出ているものの、今回の主役は『PLが自分ではない』、夢衣の親友である佐織です。

視点としては、佐織となるように描写しました。
書き手という立場で、この場の公開となります。
推敲などに協力してもらった佐織には、とても感謝です。

それでは、以下よりご覧ください。



       現在短編SS15「佐織のシロ忍犬修行記」


 これは浅野クリューナ夢衣が戦いに赴くことになった、ある日の話。
 夢衣が家を空けると、シロは平日の夜まで一匹だけになるということである。夜には父親の浅野春が帰宅するものの、やはり偽身符の彼女に任せ切りは心許無い。
 そんな夢衣が依頼に赴く日の朝だった。
 浅野家の玄関前に、忍里佐織は来ている。ある用事のためだ。
 夢衣が玄関先でシロを抱っこしていて、その小犬が親友から託される。
「それじゃあ、お願いするね。佐織」
「ええ、任せて」
 シロを抱え直しながら、佐織は答えた。彼女に抱っこしてもらっても、相変わらず大人しいシロだ。
 銀誓館学園に報告していないある事件の一件を経て、春はこの世界の真実を知っている。彼も夢衣の隣にいた。佐織に、ほんわかと声をかける。
「シロの事、よろしく頼むよ」
「はい。お任せください」
 佐織は丁寧に返事をした。そして、夢衣にも一言送る。
「夢衣、気をつけて行ってきてね」
 夢衣が真剣な表情で、佐織と春に対して頷く。
「うん、いってきます」
「いってらっしゃい」
 そう言って、春は荷物を持った夢衣を見送った。小さくなっていく娘の姿を、最後まで静かに。
 ちなみにシロも鳴き声一つ上げず、夢衣が走っていった方向を見つめていた。
 多くは語らずとも、本当に信頼し合っている者達の遣り取りに、佐織の顔も綻んだ。
「それじゃあ、わたしもこれで失礼します」
「うん。よろしく頼むよ、ってさっきも言ったね」
 苦笑いするわけでもなく、春がのんびりとした笑顔を浮かべる。
 春に一礼し、佐織は帰路についた。
 途中、ふと抱っこしていたシロを下ろし、そのシロに見上げられながら考え込む。
(「今の体力を確認しておくべきかしら)
 実は、佐織は夢衣にシロの忍犬修行を頼まれていた。付け焼刃であっても、超常のもの相手の危機対応能力を向上させるため。そして運動不足解消を兼ねてだ。明日以降に備え、体力測定に軽く走るのは良いか。
 それなりのペースで進み出した佐織の背中を、軽快な足取りのシロが追っていく。
「……」
『シロちゃんって、ちゃんと躾をする前は結構やんちゃな子だったわ。攻撃的って感じ、じゃなかったけどね』
 夢衣が語った話を、佐織は思い出した。夢衣の躾が今でこそ行き届いているから、もう気性が荒い昔のシロなど想像困難だ。
 何はともあれ、シロの体力が意外に有り余っているのは好都合である。
 修行開始前日の今日は、親睦を深めるに留めた。本来、信頼関係は一日で築けるようなものではないだろう。
 しかし、面倒見の良い佐織と人懐っこいシロは、『夢衣』を通して面識が深い。同一の存在を共有すれば、普段の交流不足程度なら補える。
 甘いだけの手加減はしない佐織師匠の修行は、明日から始まるのだった。


 翌日の早朝。
 朝食前のジョギングに出ようと、佐織が指を鳴らす。
 しかし、昨日今日で佐織の家にまだ少し慣れていないのか、ウロウロしていたシロ。
「シロちゃん」
 佐織は、今度は声で直接呼びかけた。忍犬の基礎は、呼ばれれば即座に駆けつけること。二度目だけに、叱りつけるような語気だ。
 すると……名前には反応して、佐織の納得できる速さでやってきた。光速と称するのは大袈裟である。
(「そういえば、いつも名前で呼ばれているから……。これだけは昨日の間に躾しておくべきだったわ」)
 とにかく支度を整え、佐織が何度か屈伸した後に声をかける。
「さあ、行きましょう」
 人間の言葉は完全に理解していないはずだが、シロの尻尾が左右に振られている。その振りは元気の証か。
 佐織とシロが目指すのは由比ヶ浜で、走り出しは順調だった。
(「本当に運動不足なのかしら?」)
 佐織が思わずそう考えた程に、シロはしゃんと後ろをついてきていた。往復前の一・五キロ地点に難なく辿り着いて、一先ず小休憩だ。
 シロの頭を撫でるために、佐織が屈む。
「まだ十分に走れそうね」
 元気一杯と答えるような尻尾の振りを確認して、佐織は重りをつけることにした。全幅の信頼を寄せられているのか、嫌がる様子はシロに全く見受けられない。
 かくしてジョギング再開となった。
 さすがのシロも、重り付きで往復するのは大変だったようだ。家に戻ってきた頃には、寝転がって息を切らすことになる。


 朝食前にもう一つ修行があるのだが、水分補給は絶対に欠かせない。
 シロは休憩後にしっかりと水を飲んでいて、佐織が朝食とその他の準備に取りかかる。
 その他とは、餌が入った餌皿までの道筋に仕掛ける罠だ。どこでどのように罠を……というツッコミは受け付けられない。
「シロちゃん、朝ごはんの時間よ」
 素直に応えて、佐織の所に来ようとするシロだった。あまりに素直過ぎるのは忍犬失格かもしれない。だがシロは単純に物で釣られたりはしないのだ。従うべき者を弁えられるのならば、忠実な忍犬に成れるだろうか。
 修行その二、開始である。
 罠一は、罠網。説明不要とも言えるであろう、頭上から落下してくる定番の網だ。
 罠二、ダミーの餌皿。夢衣から二つ預かってきたボウルの片方は、匂い付けの餌が一口しか入っていない。
 罠三は、トラバサミ。親友の愛犬で家族のシロを、怪我をさせない配慮をした。歯無しの上に力も弱いものを使っている。
 早速、シロは向かい始めた。よく人の顔を見上げている小犬には、周到に隠そうと頭上の罠がある種丸見え? 迂回で罠網を避けた先にあるダミーの餌皿に目もくれない。残る罠は上手く潜ませられたトラバサミ。だがその存在に気づいたのか、一旦止まる。
 ただただ真剣な眼差しで、佐織はずっと見守っていた。
 しばらくして、シロが見定めたらしいルートを辿り、最後の罠を踏まずに抜けていく。
(「勘が鋭いのね」)
 本命の餌皿まで一直線のはず……だった。佐織の感心も束の間、餌皿に届くか届かないかの瀬戸際で、何故か、何故か静止。
 シロは一瞬気が緩んだのか、尻尾の先端を地面につけてしまっていた。それが設置点近くゆえに、トラバサミが起動したのだ。餌皿に近づこうとすれば尻尾が伸びて止まるのは、尻尾が挟まったからに間違いない。
 遠目では、その様に違和感がある。まるで尻尾の先が見えない何かに引っ張られているかのようだ。失敗と判断するのは早いだろうか。
 佐織が離れた位置から目を凝らしてみれば、白い数本の線が挟まっていた。そう、他より僅かに長かった尻尾の毛先だ。
「あ……」
 本当に小さな驚きの声を出した佐織に反応し、シロが振り返って彼女を見つめる。
 無理に引き抜けば脱出できるが、これがもしそれすら不可能な罠であったならば……。失敗は失敗だ。
 佐織が餌皿を回収し、それからトラバサミを解除してシロの尻尾を解放。
「惜しいけれど、失敗は失敗よ。朝御飯はお預けね」
 人間程の変化は見抜けなくとも、シロはどこか切なげに感じさせられる表情になった。本人もとい本犬に、自覚は無いのかもしれないが……。
「そんな顔したってだめよ。忍犬への道は、険しく厳しいものなんだから」
あくまで指導する身として、厳しさの方針を変えない佐織なのであった。


 朝食抜きでシロにあまり無理をさせられず、今日の修行はこれまでか。と、そういうわけにはいかない。
 しかし、午後の修行その三に備える必要はあった。夢衣に用意してもらった覚書通りきっちりの量で、少々早めに迎えるおやつ時だ。
 お腹を空かせていたシロは、やんちゃ気質が一時復活したような尻尾の振りを見せた。 あっという間に平らげた後、お昼寝しそうな雰囲気を出しながらも腹を休めている。 
 補給が済んで眠らない内に、佐織が呼びかける。
「シロちゃん、お散歩に行くわよ」
 散歩と称した外出は、重り付きだった。ついでに商店街で夕食の買い物も兼ねるため、お行儀良くしなければならない。
 その辺りの躾は、飼い主がちゃんとしているか。
 基本的に人間の横を歩かせるのが犬の正しい散歩と言われ、佐織もそれに倣った。走行ではなく歩行なので、シロの体力も足りるだろう。
(「お散歩だからって、忍犬に油断は禁物よ、シロちゃん」)
 佐織は手の平に小石を仕込んでいて、飛礫の射出態勢に移った。まずは小手調べに軽く一発だ。
 やはり素直過ぎるシロの眉間に命中して、目が閉じられた。ついといった感じで足を止め、目を瞬かせて首を傾げる。どうも懐いた相手には弱い。
 夢衣曰く、人に限らず見る目はあるとのこと。それを信じれば、咄嗟の眼力が無ければ致命的な弱点である。
 しかし、間も無く佐織の意図を理解したようだ。歩みを再開すると、何事も無かったように横を歩きながらも佐織の様子を窺っている。
 次の一石は、シロは素早く避けた。ふんわりとした毛並に、吸い込まれるように絡まったのが有効ならの話だが。
(「反応は悪くないけれど」)
 今一度撃ち込まれた三度目、シロは完璧に回避した。そして佐織に撫でてもらえたのを機に、一定の威力では当たらなくなっていく。
(「筋が良いわ」)
 徐々に難易度を上げていったが、総合的な回避率は八割だった。潜在能力に加え、温和なシロの中にも、野生の本能がしっかりと宿っているのだろう。
 シロが素直に喜べる結果に終わった本日最後の修行。
 その散歩は、佐織も密かに触れ合いを楽しめる時間となった。 


 一日目の修行が終了し、シロにはお風呂と夕食が待っている。
 佐織は、今日の頑張りを労ってシロをお風呂に入れた。シロに使うのはボウルと共に預かってきた犬用シャンプーで、暴れられたりしない。
 さっぱりしたシロの夕食が……夢衣の覚書に沿った分量だったのは言うまでもなく。
 残りの時間を自由時間と定めれば、シロは寝転がっていた。のんびりしている間に数時間が経過し、佐織の就寝時間となる。
「シロちゃん、今日はお疲れ様。明日も頑張りましょうね」
 佐織が言った時、シロはもう夢の中に誘われていた。やっぱり疲れていたのだろう。
 そして、修行二日目に突入である。
 修行一日目の時点で、シロは早朝ジョギングに関しては問題なかった。さらに、罠に引っかからないで今日の朝食にありついている。失敗を繰り返さない気概で望んだようだ。
(「本当に筋が良いわ。明日からは、別の罠が必要ね」)
 今後の予定について考え込んでいた佐織だが、それは一度忘れることにした。
 何故なら、次は……佐織が一番神経を使う、今日の締めである水中呼吸の修行。まずは静かな池で慣らすとはいえ、さしものシロも不安げに見つめてきている。
 佐織が、重りを付けたシロを水中にそっと沈めていく。
 水に濡れてしまう当修行では、お邪魔そうなシロの毛並。大丈夫かと思わされながら、一秒が長く感じる時間が過ぎて……。頑なにやせ我慢しているだけのような静寂も、固唾を呑まされる要因だ。
 事故は最終的に起きず、佐織は池からシロを引き上げた。ずぶ濡れの小犬を優しく下ろして息をつく。
「……心臓に悪いわね」
 日頃遠慮しがちなシロが、全身を振るわせてしまったのはその直後である。
 佐織は、始めに水飛沫を浴びせたシロを注意した。だがすぐに温かな微笑を浮かべて、タオルで風邪を引かないように包み込む。相棒で忍猫のサスケの毛並とは違うが、拭いてあげるのは慣れた様子である。
 体の冷える修行後であって、即座に本日のお風呂タイムとなった。シロの心境が先日と異なる可能性はあったが、逃げ出す素振りがない。
 佐織が一安心する。
(「良かった」)
 シャンプーの泡を纏ったシロは、至ってとっても大人しかった。それにしても、修行と風呂を普通に区別するとは、シロの利口に限度は無いのだろうか。
 三日目以降の修行も、一生懸命なシロだった。水中呼吸の修行では相変わらずの手応え。一時……はらはらさせられたのも相変わらず。
 慣れてからは場所を変え、流れのある川での修行に移行した。そこで初失敗となるが、佐織が抱き上げたことで心配いらない。シロはとことん我慢強かっただけで、苦しい時はしゃんと知らせてくれたのだ。
 水中呼吸の修行失敗で罰として佐織が与えたのは、夕食を抜くというものだった。後日にも柔らかいゴム歯のトラバサミに嵌ったり、数度は川で溺れかけたり……。
 何度か修行の成果を修められなかったシロ。その度に朝食や夕食が抜いたが、それを受け入れて、自分から餌をねだってこなかった。
 耐えるシロに応え、佐織も厳しい態勢を崩さない。師匠の立場を貫いた佐織、一切反発しなかったシロ。どちらも褒め称えたいところである。
 そうして一週間が過ぎ去り、修行期間は終わりを告げた。
 昨日まで頑張ってきたシロを、佐織が厳密に評価するならば、どう答えるのだろうか。
 佐織とシロは今、浅野家の前で待機している。丁度、放課後に夢衣から鎌倉に到着したという連絡があって、彼女を迎えるためだ。
 シロが足元でしゃんとおすわりしていて、佐織が見下ろして微笑みかける。
「思っていたより、ずっと運動神経が良いのね。見直したわよ、シロちゃん」
 シロは佐織を見つめ返し、首を傾げた。
「飼い犬にしては根性もあるし、頭も良いし。これなら、夢衣も鼻高々でしょうね」
 本当に人の言葉を理解しているように、シロが尻尾を振りだす。
 しかし、ただ褒めるだけではないのが、佐織師匠であった。
「だけど、その人懐こさは、忍犬としては失格……かな。ペットとしては、満点なんだけれど」
 そう言いながら微笑のまま、佐織の表情は変わらない。
「でも、それで良いんじゃない? あなたの仕事は、忍犬じゃなくて……家族として、夢衣を癒してあげることなんだから」
 と、それが佐織の答えである。ことシロについて言えば、誰もが辿り着く答えなのだろう。
 先日のように落ち込む様子もなく、シロが尻尾の勢いを増す。
 一人は親友を、一匹は大好きな飼い主を、その帰りを仲良く心待ちにするのだった。

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